高次脳機能障害

高次脳機能障害とは

交通事故による頭部外傷、水難事故や下腿骨の骨折に伴う肺脂肪塞栓による低酸素脳症、その他外傷性くも膜下出血、脳梗塞や心筋梗塞などによって脳にダメージを受けたときに発症する後遺障害を高次脳機能障害といいます。

頭部外傷の治療は完了したのに、『注意障害』(集中できない、気が散りやすい、作業にミスが多い)、『短期記憶障害』(今しがた話したばかりのことをもう忘れている、同じことを何度も言う)、『遂行機能障害』(2つ以上のことを同時に処理することができない)、『社会的行動障害、易怒性』(人格が変わった、怒りやすくなった、暴言が多くなった)、等の状態が見受けられる場合は、速やかに専門病院で検査・診断を受けなければなりません。高次脳機能障害と診断されたときは、専門医の協力による後遺障害についての立証活動、そして高次脳機能障害の賠償について経験豊かな弁護士による損害賠償交渉が不可欠となります。

高次脳機能障害が認定される3つの要件

1)頭部外傷後6時間以上の意識障害、もしくは1週間以上の軽度意識障害が存在すること
事故当初の意識障害、半昏睡~昏睡で開眼・応答しない状態、JCSが3~2桁、GCS12点以下が少なくとも6時間以上、もしくは健忘あるいは軽度意識障害、JCSが1桁、GCSが13~14点が少なくとも1週間以上続いていること
2)以下の傷病名が確定診断されていること
脳挫傷、びまん性軸索損傷、びまん性脳損傷、急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、脳室出血、水難事故、骨折後の脂肪塞栓で呼吸障害を発症、脳に供給される酸素が激減した低酸素脳症もこれに該当します。
3)XP・CT・MRIで器質的損傷の痕跡が確認できること
レントゲンでは、頭蓋骨骨折とそれに伴う脳損傷を確認できます。
CTでは、主に水平断画像を確認、連続した画像により脳萎縮の確認が可能です。
MRIの撮像法であるDWIでは、外傷、特に軽微な脳挫傷の診断、軸索損傷の診断に対しCTや従来のMRIで確認できなかった脳損傷を証明することができます。急性期の落ち着いた段階で(受傷2~3日目)でMRIを撮影し、客観的な証拠を捉えることができるので、外傷、特に軽微な脳挫傷の診断、軸索損傷の診断に対し、DWIはT2、T1、FLAIR、CTと比較して圧倒的に有効です。受傷後早期にDWI撮影が実施されていないときは、MRIの撮影法であるSWI=T2スター検査を受けなければなりません。SWIの利点は、造影剤を使わずに静脈を映し出せることと、微細な出血、ヘム鉄に反応するので、受傷から時間が経過していても、点状出血や脳萎縮など、病変部を確認することができます。

 高次脳機能障害の立証で最も重要なことは、自賠責保険の要件を満たす証拠を十分に集めることです。この証拠集めで不足があると、本来認定されるべき等級より低い等級が認定されてしまったり、また十分な医学的証拠を集めていなかったために、等級認定後の裁判で相手方保険会社に、そもそも後遺障害認定の妥当性について争われ、負けてしまうこともあります。

 高次脳機能障害は大きな障害です。被害者様のその後の人生がかかっています。そのため、医学的証拠は十分に揃え、必要な検査所見はすべて受けた上で、後遺障害認定のみならず、その後の裁判まで見据えた証拠集めを、治療の段階から進めておかなければなりません。

高次脳機能障害の対応実績80件以上

当事務所では、開業以来毎年年間15~20件程度の高次脳機能障害の事案に対応させていただいております。高次脳機能障害の年間の認定件数が約3000件で、単純にそれを42都道府県で割ると約70件となり、当事務所の年間15~20件(ほぼ大阪府と兵庫県)は実績としては非常にな実績であると言えると自負しております。

高次脳機能障害の立証で重要なこと

医師が高次脳機能障害として診断していたとしても、自賠責の要件を満たしていなければ、それは『後遺障害』として認定されることはありません。多く見られるのは、『WAIS』という検査のみでしか評価がなされていないケースです。

医学の世界では、『WAIS』の検査で高次脳機能障害としての診断が十分であるという考え方もあるようです。しかしながら、それでは等級認定の資料としては不十分なのです。まずは早急に意識障害の所見を確認し、医師面談を行った上で画像所見と実際の症状から必要と思われる検査はすべて実施し、慢性期にはMRIでT2スターの所見を得る。それに加えて、最終的に検査結果と家族の意見を踏まえて日常生活状況報告書の作成する必要があります。これらの証拠がすべて揃った上で、はじめて間違いのない等級認定がなされるのです。

立証の手順

1)頭部外傷後の意識障害の所見の分析からサポートを開始します。
要件に満たない、もしくは所見が曖昧なときは、看護記録やカルテを精査し、ご家族からも当時の状況をお聴き取りしたうえで、受傷後の健忘の期間を洗い出し、治療先に同行してそれらの追加記載または訂正をお願いします。
2)そして、診断書に記載されている傷病名をチェックします。記載の傷病名が画像所見によって裏付けができているかを検証し、裏付けが不十分であると判断した場合には、T2スター検査による追加的な立証を行います。
3)専門病院をご紹介し、症状に適合した神経心理学検査をオーダーし、また日常生活状況報告書において、検査に現れてこない情動障害について立証し、最後に医師に後遺障害診断書、神経系統の障害に関する医学的意見の作成を依頼します。

受傷直後に頭部外傷の傷病名がなく、画像所見も得られていない場合は、高次脳機能障害の立証は行いません。自賠責保険において、その条件では後遺障害としての認定はあり得ないと考えているからです。

高次脳機能障害の症状について

症例 高次脳機能障害に特有の症状や行動
Aさん32歳は大卒後会社に就職し、営業担当として大きな成果を上げていました。
本年1/11の午前8:20頃、自動二輪車を運転して交差点を直進中、対向右折トラックと出合い頭衝突し、救命救急センターに救急搬送されました。
傷病名は急性硬膜下血腫、びまん性軸索損傷で、10日間意識を喪失した状態でした。事故受傷から1カ月が経過し、意識が清明になったことで退院し、幸い骨折等がなく、自宅で50日ほど静養し、職場に復帰したのです。
営業に復帰したAさんですが、新しい得意先の名前を覚えることができません。お客様とのアポイントや依頼されたことを忘れてしまうことが頻発し、大きなクレームとなりました。
勤務先の上司の配慮で営業担当から外れ、内勤、総務の仕事に仮配属されました。ところが、以前のように前向きに仕事に取り組む態度が見られず、無気力で、やる気がありません。
見かねた同僚が、今のAさんでもできそうな仕事を選んで渡したのですが、取り組みはするものの集中力が続かず、すぐに疲れてしまう様子で、信じられないような単純なミスが目立ちます。
事務所の仕事でも、来客と電話が同時にあるとどうしていいかわからずパニックを起こします。また、自分の仕事が早く終わっても、仲間の仕事を手伝うなど、そのときの状況に応じた臨機応変な行動をとることもなく、困り果てた同僚が新たな指示を出すと、突然怒り出し、怒鳴り散らすこともあります。
事故前のことはほとんど覚えておらず、今自分が抱えている問題にも気が付いていない様子です。一体、Aさんには何が起こったのでしょうか?
これこそが、本件交通事故による頭部外傷後の高次脳機能障害なのです。
特に、びまん性軸索損傷では、脳表面の広範囲が点状出血することで、脳神経細胞の繊維、つまり軸索が広範囲に断裂し、ネットワークの機能を失うと考えられています。
Aさんの症状をまとめると、注意障害、記憶障害、遂行機能障害、社会的行動障害などに分類することができます。では、その1つ1つを検証していきます。

高次脳機能障害の諸症状

記憶障害26%

  • 人の名前や顔が覚えられない
  • 新しいことが覚えられない
  • 同じことを何度も話したり聞いたりする
  • 当日の予定を忘れている

注意障害30%

  • 気が散りやすい
  • 作業にミスが多い
  • 注意が散漫になり、集中力に欠ける
  • 一つの物事に固執して他に注意を移せない
  • 半側空間無視

遂行機能障害16%

  • 周囲を気にせず自分勝手にやってしまう
  • 見通しを自分で立てられない
  • 一つ一つ指示しなければ行動できない
  • 自ら行動を開始しない

社会的行動障害20%

  • 突然怒り出すことがしばしばある
  • 場違いな行動・言動が目立つ
  • 幼稚になった

失語症57%

  • 流暢に話すことができない
  • 言われたことが理解できない
  • 字の読み書きができない

地誌的障害6%

  • 迷子になりやすい
  • 地図が読めない
  • 場所を認識できない

失行症11%

  • 道具が上手く使えない
  • 動作がぎこちない

失認症5%

  • 物の形が把握できない
  • 人の顔が覚えられない
  • 半側身体失認

脳のネットワークについて

神経心理モデルの底辺には、覚醒、その上に抑制。発動性があり、さらに注意力、情報処理、記憶と続き、そのまた上には遂行機能、最後の頂点に気づきがあります。
【気づき】
  ↑
【遂行機能】
  ↑
【記憶】
  ↑
【情報処理】
  ↑
【注意・集中力】
  ↑
【抑制・発動性】
  ↑
【覚醒】

これらは単体で機能しているのではなく、常に下から上にかけて影響を及ぼしています。
例えば、記憶障害ではメモをとることが大切ですが、発動性が低いとメモをとろうとしません。
つまり、高次脳機能障害の症状は、これらが複雑に絡み合って症状として発現します。
「あの人は病識がまったくない。せめて、自分の障害を認識してくれれば・・・」
「突然の交通事故で高次脳機能障害になった人が、自分の障害について正確に認識する」
高次脳機能障害の被害者様にとって、実はこれこそが非常に困難なのです。神経心理モデルの頂点が【気づき】であるためです。
下の階層に障害があると、より高次な脳機能はその影響を受けることになります。
つまり、注意機能に問題があると、それに伴って記憶や遂行機能に問題がある可能性が出てくるのです。
逆に言えば、注意機能に障害や問題がない状態で、記憶や遂行機能のみに障害や問題が発生するということはあり得ません。

注意障害について

前頭葉は、注意・思考・感情のコントロールを行い、物事を整理・処理・実行する機能を担っています。
この部位を損傷すると、注意障害や遂行機能障害、社会的行動障害などが予測されます。
注意機能は記憶や遂行機能の土台であり、注意機能がうまく働かないと、より高次の認知機能に影響が出てくることになり、後遺障害等級の審査では、注意機能の程度について非常に着目されています。
注意障害については、TMT、CAT、STROOP検査で立証します。半側空間無視はBIT検査で立証します。
高次脳機能障害では、注意障害の立証を欠かすことができません
高次能機能障害の専門医、等級を審査している調査事務所の顧問医も注意障害に注目しているためです。
高次脳機能障害の立証において、その症状別に順位付けを行うことはできません。もちろん、全ての症状について丹念に立証すべきなのは当然です。しかしながら、注意障害については特に注意深く立証する必要があります。
注意障害がそれほど障害域ではなく、他の障害が大きな障害域であった場合、それは医学的に説明がつかないためです。

高次脳機能障害の立証を万全の態勢でサポート

高次脳機能障害は早めの相談が大切です!当事務所では、過去の実績から高次脳機能障害の等級認定において独自のメソッドを確立しております。具体的には、被害者様の症状に合わせて入念なコンサルティングを行い、医療機関への協力要請、必要な検査の依頼など、後遺障害診断書を作成する前の段階からしっかりと医学的根拠を積み上げて行くことで、適正な等級認定が受けられるようサポートしております。

ご相談ください!

検証、立証、賠償の三段階を行政書士、医療機関、弁護士で万全の態勢でサポートします。交通事故による高次脳機能障害の被害者の皆様、そのご家族の皆様、どうぞご相談ください。


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