頭部外傷によって頭部に衝撃が加えられると、白質の神経線維がびまん性に傷害され、白質の体積が減少し、脳室が代償性に拡大します。脳外傷による高次脳機能障害の二本柱ともいえる、全般性認知機能の低下と情動障害は、前頭葉と側頭葉の損傷に帰せられやすいが、これらのほどんどはびまん性脳損傷・びまん性軸索損傷によるものであると医学界では考えられています。
つまり、局在性脳損傷(脳挫傷など)の画像所見がやや弱い場合は、びまん性損傷がなければ高次脳機能障害は起こりにくいのではないか、と考えられているのです。
それを補完する資料が、意識障害なのです。受傷直後に意識障害があれば、受傷当日の脳画像にびまん性損傷が認められなかったとしても、びまん性軸索損傷である可能性が非常に高いのです。つまり、事故当日に画像所見に写らなかったびまん性損傷の所見を、意識障害の所見でカバーしようとしているのです。
意識障害があれば、脳に何かしらのびまん性損傷があったと推定ができるので、そこで脳挫傷やくも膜下血腫などを引き起こした頭部衝撃があるのであれば、高次脳機能障害を引き起こしやすいびまん性脳損傷もあったのだろう、と判断がなされるわけです。
意識障害がなぜ重視されるのか? 上記のような理由があるのです。