自賠責保険の後遺障害別等級表が孕む問題点

制度上の限界

自賠責保険の後遺障害別等級表は、労働者災害補償保険法上の障害等級に準じて作成がなされています。
しかし、その対象範囲は、労災保険の場合は15歳以上の働ける年代層が対象であるのに対し、自賠法の対象は幼児や高齢者も含む、交通事故被害者全般が対象となります。

また、労働者災害補償保険法上の障害等級は、そもそも炭鉱労働者を想定して作成がなされたものであり、それを現代にそのまま適用しているのです。
自賠責保険が後遺障害別等級表を、労働者災害補償保険の障害等級に準じているということは、つまり交通事故による後遺障害の認定基準を炭鉱労働における労働災害による後遺障害の認定基準をそのまま準用していることとなり、内容的に問題があることはもちろん、障害等級の認定の基準自体が古すぎるという問題があるのです。

平等を建前とするゆえの歪み

自賠責保険の後遺障害別等級認定表は、平等を建前として作成されています。
しかしその平等によって、『性別』『利き腕であるかどうか』『未婚・既婚の別』『年齢』などの個別事情は一切考慮されません。

例えば、指の用を廃した場合であっても、被害者の職業がピアニストであったとしても、自賠責においてはその事実は一切考慮がなされません。
また、顔に傷跡が残った場合であっても、その被害者が妙齢の未婚女性であっても、老齢の既婚女性であっても、自賠責では支払われる保険金額に変わりはないのです。

労災に準じるがゆえの弊害

先にも述べましたように、自賠法上の後遺障害別等級認定表は、労働者災害補償保険法上の障害等級に準じています。
したがって、後遺障害の評価においては『労働能力の喪失』によって評価がなされ、そのために、『被害者が好きなスポーツを楽しむことを奪われた』『被害者が特定の趣味を障害によって楽しむことを奪われた』といった、生活上の生きがいを喪失したことに対する評価はなされません。
慰謝料は自賠責にもありますが、それは上記のような『生きがいや趣味を奪われたことを算定したもの』ではないのです。
外国では、これらの『生きがいの喪失』に対して一定の賠償金が支払われるのが一般的です。

まとめ

以上のように、自賠法上の後遺障害認定基準には、さまざまな問題点があります。後遺障害の実情とかけ離れた基準になっているものもあります。
個別事情は一切考慮されず、平等を建前にしていますが、平等を建前とするがために非常に血の通わない、冷徹とも思えるような制度となっているのです。

ご相談にお越しになる被害者の皆様の中には、『なぜ?』『こんなに症状が辛いのに・・・』と言って悲嘆される方もおられます。
しかし、私たちは『自賠法上の認定基準』の中で後遺障害等級を獲得していかなければなりません。
この冷徹とも言えるルールに則ってでしか、どれだけ症状を訴えたとしても『自賠法上では』等級の認定はなされないのです。

現状では、自賠法の範囲外で後遺障害を訴えていくのであれば、それは『裁判・示談』において斟酌を求めていくほかありません。

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