先週の肩シリーズの続きです。
腱板損傷を疑う鑑別ポイントと、いざ立証をする場合に必要な確定診断について、今回を含めて残り三回で書きたいと思います。
鑑別ポイントについて書く前に、今日は最も誤診されやすい肩関節周囲炎との違いについて、特にピックアップして書きます。肩関節周囲炎とは、いわゆる五十肩のことです。発症する症状が似ていることから、50代以上であれば肩関節周囲炎と診断されやすくなります。
また、肩関節周囲炎である上に事故で腱板損傷となり、診断は肩関節周囲炎のまま、という状態は非常に危険です。この場合は一刻も早く腱板損傷を立証しなければなりません。肩の痛みの訴えは事故前から(肩関節周囲炎のため)ありますので、事故後の肩の痛みの訴えが事故との因果関係を否定されるからです。この場合は、立証のためのできるかぎり新鮮な所見を得る必要があります。
さて、
腱板損傷と肩関節周囲炎との特徴の比較についてです。
事務所 | 腱板損傷 | 肩関節周囲炎 |
---|---|---|
外傷⇒ | ± | - |
症状⇒ | 運動痛・夜間痛 | 運動痛・夜間痛 |
軋轢音 | + | - |
drop arm sign | + | - |
subacromial effusion sign | + | - |
以上、表でまとめてみました。
まず、症状についてはいずれも運動痛、夜間痛であり、非常に似通っています。
そして最も大きなポイントが、肩関節周囲炎は外傷によるものではない、という点です。腱板損傷は外傷性のものとそうでないものがありますが、肩関節周囲炎は外傷性のものはありません。この時点で、腱板損傷であるにもかかわらず肩関節周囲炎と診断されていると、いかに大変なことか、絶望的な状況かがおわかりいただけるかと思います。
要は、事故との関係がない傷病として診断されていることを意味しています。よって、肩関節周囲炎では後遺障害の認定もあり得ません。希に、外傷性肩関節周囲炎?という謎の診断名を見かけることがあります。そんな診断名を見かけたら、すぐにご相談ください。
次に、軋轢音です。この軋轢音は、腱板の断裂部分が烏口肩峰アーチと擦れることによって発生します。肩関節周囲炎にはない症状ですので、有力な所見です。
drop arm sign、subacromial effusion sign についても、腱板損傷を立証するうえで非常に有益な立証材料となります。肩関節周囲炎には見られない症状です。subacromial effusiom signがあれば、ほぼ間違いなく腱板断裂といって差支えないくらい強力な症状です。
具体的な内容については、次回の鑑別ポイントについて、で書きます。
明日は終日病院同行で時間がとれず、明後日金曜日は午前は行政書士仲間との勉強会、そして午後からは土日の東京での弁護士との合同研修会に向けて準備しなければなりません。ですので、今週の業務日誌は今日で終了いたします。
来週月曜日から再開します!