先日、ある弁護士事務所へ依頼され、さらに当事務所へセカンドオピニオンを求める形で当事務所の開催している相談会にお越しになった被害者様がおられました。

その被害者様の傷病はムチウチで、ムチウチの等級認定における後遺障害のサポートを弁護士から受けているとのことでした。
その内容が、唖然とするものでした。
その内容はサポートといっても後遺障害診断書の書き方についてのレクチャーのみで、それを被害者自身に医師に依頼させるというもの。
そして、そのレクチャーの内容がすべて的外れなレクチャーだったのです。

まず、大前提として、ムチウチの認定にとって決め手となる要素とは何か、をおさらいしておきます。
画像所見?神経学的な検査所見?
違います。決め手となる要素は、・主治医の意見(症状の一貫性について医師が認識していること) ・事故態様(受傷と症状との整合性) ・通院実績(しっかり治療(施術ではありません)を受けたうえで残存した症状なのか) ・症状の信用性(握力が極端に低下している、通常ありえないと考えられる可動域や検査結果、傷病に見合わない大げさな自覚症状、などが記載されていないこと)
ズバリ、この4点です。

考えてもみていただきたいのですが、仮にムチウチで画像所見が認定の決め手になるのであれば、20代30代の若い年代の被害者はほぼムチウチでの認定は受けれないことになります。(所見がないため)
それであるなら、そもそもそういった若い年代のムチウチ案件は受任すべきではないし、受任前に画像を確認して、『これは認定されません』とはっきりと相談者に申し上げるべきなのです。
また、仮に後遺障害診断書の内容ですべてが決まるのであれば、被害者の訴えに対して甘い医師が作成する後遺障害診断書が有利に働いてしまいます。そんなことになるほど、調査事務所の調査能力はお粗末ではありません。しっかりとポイントを見定めています。

さて、その被害者様が弁護士から受けていた後遺障害診断書のレクチャーの内容とは、
・自覚症状の欄に、とにかくたくさん日常生活で困ることを書いてもらうようにしなさい
・神経学的検査所見の欄に、スパーリング、ジャクソン、腱反射、MRI所見等多くの所見をしっかり書いてもらいなさい。これが最も重要
・予後欄に、緩解の見込みがないことを書いてもらいなさい
という内容でした。

お粗末どころか、むしろ認定の足かせになるようなアドバイスと言わざるを得ません。
まず、自覚症状についてですが、仮にその記載が日常生活上ありとあらゆる『困っていること』の記載が有利になるとしたら、単純に文章のうまい人が認定され、そうでない人は不利になることになります。
また、症状の感じ方は職業や生活内容で千差万別であるはずなのに、そこには客観性が何もありません。
そんなわけはないのです。
そんな多くの記載を求めれば、医師からの心証を悪くする恐れもありますし、また大げさな内容が含まれている場合、また常時の症状ではないように思われる内容が含まれている場合、むしろ認定に不利に作用してしまいます。
自覚症状は、『シンプルで明解に、大げさな表現は入れない』ことが大切なのです。

次に、神経学的検査所見についてですが、通常ムチウチで腱反射に異常が出るレベルは考えられません。ムチウチで腱反射が正常でも何もおかしいことではないのです。また、画像所見も含めてですが、正常な検査所見、異常のない検査所見をいくつ記載してもらったところで意味がないのです。むしろ、所見はないとあえてアピールしているようなものです。
通常、ムチウチの場合多くの検査が異常になることはありません。握力がガタ落ちすることもありません。
検査所見については、『スパーリングテスト、ジャクソンテストでもし陽性であればその所見を記載いただき、MRI所見については圧迫が認められる場合のみ客観的にそれを記載していただく』これで十分なのです。
握力が大きく低下している所見などは、記載されるとむしろ不利になります。もしそういう症状が出ているのだとしたら、それは事故による頸椎捻挫を原因としないものか、もしくは別の傷病を原因とするものか、そのどちらかです。

最後に、予後欄について。
これについては、『不明』『固定』もしくは空欄のままで大丈夫です。
ことさらに、『緩解しない』ことの記載を医師に求めることは愚策です。心証を悪くするだけです。最初から医師が『緩解しない』と記載していたのであれば、そのままでかまいません。
自賠責調査事務所も、医師も、ムチウチの症状が今後将来にわたってずっと続くとは最初から考えていません。
無理に医師にそのように書くように求めて心証を悪くする方が、結果的に不利です。
なぜなら、医師は後に自賠責調査事務所からの医療照会に対して回答するからです。その内容こそ大切で、医師の思ってもいないことを強要したところで意味がありません。

以上、こんなレベルのアドバイスでサポートか・・・と思わざるを得なかった案件でした。
この他には、『ことさらに、放射線科の医師に画像鑑定をかけようとする弁護士』も問題に感じています。
これは、その鑑定をかける趣旨などにもよりますが、多くのケースで『サポートをしているアピール』として画像鑑定が利用されている感があります。
つまり、ウチに依頼すれば、知り合いの放射線科の医師に鑑定書作ってもらいますよ、というセールストークとして利用しているのです。
さらに、その放射線科の医師というのは、大手コンサル会社のセミナーなどで紹介された、他の複数の弁護士が同じように使いまわしている医師です。
そして、鑑定費用については弁護士費用特約から回収し、つまりその弁護士は、依頼者に対しては鑑定してあげているという、後遺障害のサポートをしている口実に、また費用に関しては弁護士費用特約から回収し、労せず経費もかけずに後遺障害サポートの対応をしているのです。
おそらく、その弁護士はその画像鑑定が決め手にならないことは承知しながらそういう対応をしているのです。(もし承知していなかったとしたらそれはそれで問題ですが)

上記のような対応で、後遺障害の専門家を名乗っている弁護士・行政書士がいることに、非常に問題を感じています。
ムチウチの対応で最もやらなければならないこと、それは『医師と認識を共有すること』です。
何の認識かというと、『初診から固定日に至る症状の一貫性の有無の認識と、その症状の程度についての常識的な判断』についての共有です。これはさらに言うと、調査事務所からの医療照会に対する、医師、被害者の意識の共有ということになります。
このためには、『医師面談が絶対に欠かせないのです
何百例と医師面談を経験してきましたが、医師面談なしに理想的なムチウチの後遺障害サポートなどあり得ません。
ムチウチの被害者の皆様におかれましては、専門家への依頼を検討する時に、『医師面談を実施しているかどうか?』にぜひ着目していただきたいと思います。
医師面談も行わず、『後遺障害診断書の書き方のレクチャーのみの対応しかしない専門家』であったり、『すぐに画像鑑定をかけることによってサポートしていることをアピールする専門家』に遭遇した場合は、ぜひ当事務所までセカンドオピニオンという形でかまいませんのでご相談にお越しください。

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