自動車保険の対人・対物保険は賠償保険ですから、損害賠償額は加害者と被害者の話し合いで決められるのですが、話し合いで決まらないとき、行き着くところは裁判による決着です。
ところが、労災保険は被災労働者を救済することを目的として国である厚生労働省が運営する補償保険ですから、支払われる給付金額は予め決められているのです。
補償保険の給付に慰謝料の費目はなく、給付額も賠償保険に比較すれば低額です。

では、業務中の被災では、労災保険からの支給額のみで納得しなければならないのでしょうか。
会社を安全配慮義務、民法415条、労働契約法5条違反、または不法行為に基づく使用者責任、民法715条で損害賠償責任を問うことはできないか。このような時に用いられる制度が、労働審判制度です。

労働審判制度は比較的新しく、平成18年4月に、労働者と勤務先との間に生じた労働紛争を地方裁判所において迅速、適正かつ実効的に解決することを目的として設けられました。
地裁で裁判官が審理を行い、調停や審判を行いますので実質的には裁判です。
しかし、3回の審理で決着が着くので、通常の裁判に比較すると圧倒的に早いのです。
すべての案件に適用できるのではありませんが、労災事故であっても、地裁基準で損害賠償を受ける道は残されているのです。

労働審判制度のメリット

審判手続は、裁判官である労働審判官1名と労働関係の専門的知識と経験を有する労働審判員2名の計3名で組織する労働審判委員会が審理を行い、調停を提案します。
調停が不成立のときは、過去の判例なども参考にしつつ、解決のための労働審判が実施されます。
ここまでは、原則として3回以内の期日で進められるのです。

現状は、平均2カ月半の審理期間で、調停の成立により事件が終了することが多く、労働審判が確定したものも含めると80%の紛争が労働審判の申立てで解決しています。2カ月半、約75日で決着がつく、そのスピードがメリットです。
なお、労働審判の内容に対する異議申立がなされたときは、通常訴訟に移行することになります。

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