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高次脳機能障害


高次脳機能障害 脳の損傷部位とその症状について⑤

後頭葉の損傷

脳の後ろ側を後頭葉といいます。後頭葉は、目で見た情報を分析・処理をする働きを司っています。
色、形、明るさ、模様、位置、動きなどを多角的に分析しています。人間は目に入っている情報すべてを認識しているのではなく、自分に必要な視覚情報を後頭葉で分析・選択をしているのです。
したがって、画像によって後頭葉の損傷が確認できる場合、失認症が疑われます。

具体的には、
・文字が読めない(文字を形として処理することができない。したがって、失読ではない。)
・ある絵を見てもそれが何であるかが理解できない
・相貌失認(人間の顔の部分だけが理解できなくなります。いわば、周りの人間が皆のっぺらぼうのようになってしまいます。人物の全体の感じや声などから、その人が誰であるかを判断しなければならなくなります。)

などの症状が現れます。視覚情報の分析・処理において障害が出るのが、後頭葉の損傷です。

高次脳機能障害 脳の損傷部位とその症状について④

前頭葉の損傷

前の脳(前頭葉)を損傷した場合について。
前頭葉といっても、以前の記事でご紹介した左脳の損傷、右脳の損傷とも被る部分もあります。
ですがわかりやすく!、という趣旨から、あえて大まかに脳の前後左右の部位、という表現で記事にしております。前頭葉にも左右があり、厳密に言うとこういう紹介の仕方は正しくないのかもしれません。それは承知のうえで、私はあえてわかりやすく、脳の前の部分の損傷、というご紹介をします。
前置きがながくなりました・・・

前頭葉は、他の脳領域すべてと連結をしている非常に重要な部分です。精神機能を司っており、具体的には「情動」「意欲」「注意」「学習」「創造」などの高レベルな働きを司っています。
また前頭葉は日常生活や仕事上で欠かせない働きをもっています。それは、「同時に複数のことに注意を向ける」「意欲的な態度をとる」「仕事の手順を効率よく行う」「周りの状況を考慮する」などの働きです。

前頭葉は言わば脳全体の指揮官であり、他の脳のそれぞれの部位が前頭葉の指揮に従って動いているのです。
したがって、前頭葉を損傷すると、あらゆる面で障害が生じる可能性があります。
以下のような障害が想定されます。

感情のコントロールができない
感情の動きが乏しくなることにより、表情が乏しくなります。また、気持ちが落ち込み勝ちであったり、あるいは感情を抑制できずに怒りっぽくなったりします。

物事の工夫ができない
効率的な時間の使い方ができなくなります。また、「今度はこうすればうまくいくんじゃないか?」というような工夫や新しい創造ができなくなります。

意欲の低下
積極的に何かをしようとする気持ちや前向きに考える力がなくなります。

問題解決能力の低下
相手の気持ちを推察して上手く解決をすることができない。また、過去の経験を活かして問題を解決しようと考えることができなくなります。

前頭葉はすべての脳活動を指揮・調整していますので、前頭葉の損傷は様々な障害が現れる可能性があります。日常生活や仕事に直結するような能力に影響を来すことも多いのが特徴です。

高次脳機能障害 脳の損傷部位とその症状について③

大脳辺縁系の損傷

大脳辺縁系とは、大脳半球の下部にある領域で帯状回、扁桃体、海馬などの部位が属し、視床下部を包む形で位置しています。

大脳辺縁系は記憶、本能、情動などを統合的にコントロールしている部位であり、記憶を司る海馬も存在します。
満足をする、怖いと感じる、などの情動は辺縁系でコントロールされています。

海馬を損傷すると目や耳から伝わる情報を「覚えるもの」「覚えないもの」に振り分ける能力に障害が出ます。そのため、見たり聞いたりしたことを覚えられなくなります。
したがって見当識障害(日時や場所、人の名前が覚えられなくなる)が起こることもあります。

前向健忘・・・短期記憶障害です。最近の出来事や約束事を忘れてしまい、忘れていることを指摘されても思い出すことができません。完全に記憶が欠落している状態です。

逆行健忘・・・長期記憶障害です。五年前に祖父が亡くなっていたとして、完全にその記憶が欠落しています。祖父が死んだという実感がありません。

・ワーキングメモリーの障害・・・伝言ができない、相手の言っていることを覚えられない、など。

・情動の障害・・・食べても食べても食欲が満たされない、買い物をしても際限なく買ってしまう、など。

・本能の障害・・・危険な場面に遭遇しても、恐怖を感じることがない、など。

大脳辺縁系の損傷が画像によって疑われるときは、上記のような障害が想定されます。

高次脳機能障害 脳の損傷部位とその症状について②

右脳の損傷

右脳を損傷すると、視覚情報処理機能に障害が現れます。
視覚情報処理機能とは、目で見た物をとらえ、物の構成ができる機能です。
簡潔に言うとすれば、右脳は主に目で見る映像についてのあらゆる処理を司っています。

具体的には、
視覚的全体把握(目から入る情報を全体的に処理する)
視空間認知(目から入る情報を空間的に把握・処理する)
視覚処理速度(目から入る情報を瞬時に捉える)
視覚性注意力(絵の構成要素を見て、それぞれに注意を向けることができる)

に異常が現れます。
従いまして、右脳の損傷を画像から確認できる場合は、注意障害、失認症、半側空間無視などが疑われます。

・図形を正確に模写することができない
・物の色を見分けることができない
・奥行を把握しにくい
・風景などの構成要素(木、山、人、花、など)の全てに注意がいかない(あるものが注意がいかず欠落する)
・相手の表情なとから、相手の感情を察することができない

これらが右脳の損傷により想定される障害です。
リハビリにおいては、全体把握力、視覚性注意力、認知力を積極的に高めるために、パズルや積み木、塗り絵、模写などが行われます。

このような図形の模写が難しくなる

高次脳機能障害 脳の損傷部位とその症状について①

本日から五回にわたって、脳損傷における部位と症状についての関係を、わかりやすさを重視して記事にしてみたいと思います。

まずははじめに・・・
例えば後頭部に衝撃・圧力がかかったとします。その場合、損傷する部位は後頭部だと思われるかもしれません。確かに後頭部も損傷は受けるのですが、最も大きな損傷を被るのはその正反対の部位、すなわち後頭部の場合は前頭部に最も大きな損傷を受けます。

左脳の損傷

左脳を損傷すると、言語機能に影響が現れます。
言語野は左脳にあり、読み書きや話しをして相手の会話を理解する能力を司っています。
したがって、脳の左側を損傷すると、言葉にかかわるあらゆること(伝えたいことを話す、相手の言っていることを理解する、文章を読む、文章を書く、など)に障害が出るのです。

症状分類の記事でも書きましたが、
・うまく言いたいことを言えない(ブローカ失語)
・相手の言っていることを理解できない(ウェルニッケ失語)
・文字を書けない(失書)
・文字を読めない(失読)
これらの症状が、脳の左側を損傷することによって起こります。
話す、読む、聞く、書く、など、言語に関するあらゆるコミュニケーション全般についての障害を「失語症」と言います。したがって左脳に損傷が確認できる場合は、失語症は想定される障害ですので必ず失語症を調べる神経心理学的検査を受ける必要があります。

失読、失書についてもう少し詳しく説明しますと、
・失読(文字が読めない)
仮名が読むときの脳の働き・・・視覚野⇒左角回⇒ウェルニッケ領野
漢字を読むときの脳の働き・・・視覚野⇒左側頭葉後下部⇒ウェルニッケ領野

・失書(文字が書けない)
仮名を書くときの脳の働き・・・ウェルニッケ領野⇒左角回⇒体性感覚野
漢字を書くときの脳の働き・・・ウェルニッケ領野⇒左側頭葉後下部⇒左角回⇒体性感覚野

高次脳機能障害は、画像をチェックすることが大切です。

  1. 聴放線
  2. 横側頭回
    (聴覚野、聴覚連合野)
  3. Wernicke 領野
    (ウェルニッケ領野)
  4. 縁上回下部
  5. 中側頭回
  6. Broca 領野
    (ブローカ領野)
  7. 中心前回
    (運動野、運動連合野)
  8. 中心後回
    (感覚野、感覚連合野)
  9. 縁上回上部

高次脳機能障害の症状分類⑩

半側空間無視

右脳を損傷することによって発症します。右脳は視空間認知をほ司っており、そのために右脳が損傷することで空間無視が発現します。
そして右脳は左側空間の認知を司っているため、半側空間無視はほとんどのケースで左側に発症します。
左側が実際に見えていないのではなく(視神経などに問題があるわけではなく)、左側に意識がいかないために左側にある物が認識できないのです。

具体的には、
・ひげを剃ると左側を剃り残す
・よくつまずく、よくぶつかる
・食事などのときに、左側のものに気が付かない

といった状態が見られます。

半側空間無視の特徴

左目が実際に見えなくなっているわけではなく、左側に意識が行き届かないために左側の物を見落とす症状が出ています。

・簡単な絵を模写してもらう
左半側空間無視の人の絵は、絵の左側があまり描かれません。

・ひもの真ん中を触ってもらう
触った位置が右側に片寄っていた場合、左半側空間無視です。簡単にチェックできる方法です。
本人が触った部分からひもを重ねて、その差が大きいほど無視の範囲が広いということになります。

高次脳機能障害の症状分類⑨

記憶障害

記銘力と想起力に異常がある症状です。

記銘力
記銘力とは、今現在見たり聞いたりしたことを覚える力のことです。
記銘力の欠落は、高次脳機能障害の記憶障害では最も大きな特徴であり、これが痴呆とは違う点です。

想起力
想起力とは、思い出す力のことです。

記憶障害の特徴

脳に損傷を受けた場合、昔のことを思い出す力である想起力は比較的保たれています。
しかし、今現在見たり聞いたりすることを覚える力である記銘力が欠落してしまう人が多いのです。
今聞いたり見たりしたことを、数分~数時間後には忘れてしまいます。ですが、本人は自分の記憶力が落ちていることに気が付きません。

同じことを何度も聞く、という症状も、本人にとっては初めて聞いているつもりなのです。
記憶障害について他人に指摘されたことすら覚えていないため、人間関係がうまくいきません。

高次脳機能障害の症状分類⑧

遂行機能障害

計画や手順を効率的に行うことができない症状を、遂行機能障害といいます。
何かをしようと考えるときに手順を計画し、効率的に行うための工夫ができません。
遂行機能は思考、判断、知覚、言語、記憶などあらゆる能力が複合的に絡み合っており、これらを万遍なく使いこなす力が必要です。
これらをまとめて使う、という能力は、前頭葉が司っています。したがって、前頭葉に損傷を受けた場合は遂行機能障害が疑われます。

遂行機能障害は、簡単に言うと「だんどり」や「手順」がうまく行うことができないことなのです。

遂行機能障害の特徴

物事を効率よくできず、だんどりや手順をうまく工夫することができません。

時間の配分がうまくできない
「何時に出発すれば間に合うのか?」「どの交通機関を使えば早いのか?」といったことが判断できません。

使い方の工夫ができない
物を書くときにスペースを計画して書けない、文字の大きさを考えて書くことができない、など。

行動の先読みができない
一つ一つの行動はできるが、次の行動を予測してスムースに次の行動に移れない、など。

高次脳機能障害の症状分類⑦

社会的行動障害

感情のコントロール(喜怒哀楽)や自発性(意欲)に問題が起こり、状況に適した行動がとれなくなる症状です。
子供っぽくなる、家族に依存的になる、怒りっぽくなる、まわりに無関心になる、など。
感情反応(起こる、笑う、泣く)や行動反応(状況に適さない行動)を引き起こす要因が何であるかがコントロールできません。したがって、葬式でゲラゲラ笑う、といった状況に適さない行動をとってしまうのです。

社会的行動障害の特徴

事故前までは温和であったのに、事故後は怒りっぽくなった、など家族やまわりの人間にとってはまるで別人のような印象を受けます。

依存的になる、子供っぽくなる
・自分から何かをしようとしない
・家族にすぐに頼る
・子供っぽい言動をする

感情のコントロールがうまくできない
・怒りっぽい
・急に笑い出すことがある
・急に泣き出すことがある
・イライラしやすい

欲求が抑えられない
・お金があるだけ買い物をしてしまう
・好きなものだけを食べる
・欲しいものが我慢できない

状況に適した行動がとれない
・状況に適した行動・言動ができない
・思いついたことをすぐに言う

リハビリではグループ訓練に参加し、行動の管理法について何度も練習をすることによって症状を改善していきます。

高次脳機能障害となる原因とは?

いままで、高次脳機能障害の様々な症状について分類をしてきました。この分類はまだ続くのですが、今日は少し視点を変えまして、そもそもなぜ交通事故によって高次脳機能障害になるのか?という根本的な部分について書こうと思います。

高次脳機能障害の原因とは?

高次脳機能障害とは、交通事故に特有のものではありません。
高次脳機能障害とは、脳が損傷されることによって現れる症状のことです。
その原因には、
・脳が傷つけられたり、圧迫されることによる損傷(脳外傷)
・脳の血管が詰まったり、切れたりすることによる損傷(脳卒中)
・脳が炎症を起こしたり、酸素不足に陥ることによる損傷(脳炎、脳症)

以上の三つがあります。交通事故によって起こる高次脳機能障害の原因は、これらのうち脳外傷による脳の損傷が原因となります。

脳外傷

頭部をぶつけることにより脳に損傷を受けたものを脳外傷といいます。事故により脳に衝撃が加わることで脳内出血が起きたり、圧力がかかって脳が損傷を受けます。
外傷による脳損傷の特徴は、脳卒中のように脳の特定の領域だけが障害されることが少なく、脳全体が広くまんべんなく障害されるケースが多いことです。そのため、画像診断だけでは損傷された脳の部位を特定できないケースもあります。

脳外傷の種類

脳挫傷
脳組織の損傷で、毛細血管から出血します。
急性硬膜外血腫・急性硬膜内血腫
脳を囲っている最も外側の硬い膜(硬膜)に血腫(血液がたまる状態)ができ脳細胞が破壊されることがあります。硬膜の外側の場合は急性硬膜外血腫、硬膜の下側の場合は急性硬膜内血腫となります。
びまん性軸索損傷
脳全体が広くまんべんなく損傷されます。

脳外傷の特徴

衝撃が加わった部分の脳細胞が直接損傷した場合(外力が加わった場所と正反対側の場所が損傷されます)
・記憶障害
・失行症
・失語症
などが主に想定される症状です。記憶力が悪くなった、計算ができなくなった、文字が読めないなど、比較的低下した能力がはっきりと見て取れます。

広く全体的に衝撃を受けた場合(脳の神経線維が損傷しています)
上記の症状に加え、さらに情報処理・情報伝達がうまくいかなくなっている傾向があります。
動作が緩慢になっている、物事に注意が回らない、意欲が低下している、ボーっとしていることが多い、など。

いずれの外傷のケースであっても共通しているのは、注意障害です。
あらゆる行動の基盤となるのが注意機能です。生活の組み立ての土台となります。その注意機能に異常をきたすのが、高次脳機能障害の最も根底にある、あらゆる症状に共通する特徴です。

  ← びまん性軸索損傷の点状出血

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